ユニスワップ財団ら、SECに「DAOは分散された個人の集合体」と提言

DAOの定義に関する見解を提示

大手分散型取引所(DEX)ユニスワップ(Uniswap)を支援するユニスワップ財団(Uniswap Foundation:UF)とDeFi教育基金(DeFi Education Fund:DEF)は、米証券取引委員会(SEC)に対し、DAO(自律分散型組織)を「分散された個人の集合体」として扱うべきだと求めている。両者は、SECの暗号資産(仮想通貨)タスクフォースに宛てた、5月27日付の連名書簡の中で、この立場を表明した。

この書簡は、SECのコミッショナーであるヘスター・パース(Hester Peirce)氏による2月21日の声明「There Must Be Some Way Out Of Here」に対する意見として提出されたものである。

パース氏は、DAOに直接言及はしていないものの、「Rule 195」と呼ばれるセーフハーバー制度案や、ネットワークの「十分な分散化」の基準、DAOにおける証券法適用の可否などについて、業界から広くコメントを求めている。

これを受け、UFとDEFはSECに対し、DAOのメンバーを「積極的な参加者(active participants)」と見なす現在のアプローチを見直すべき理由を提示した。

両者は「SECは、開発者や特定のグループが積極的に関与しているかどうかではなく、ネットワークやプロトコルにおけるガバナンス権限の分散状況に注目すべき」と主張。DAOは中央の管理者を持たない、「分散された個人の集合体」として評価すべきだと述べている。

また、SECのDAOに対する過去の対応には一貫性がなく、業界に混乱を招いていると指摘。

たとえば、2017年のDAOレポートでは、ドイツのブロックチェーン企業スロック・イット(Slock.it)が提案した「The DAO」に対し、その運営が「他者の努力」に該当するとされ、証券法の適用対象になり得ると判断された。一方、SEC企業金融部門のディレクターだったウィリアム・ヒンマン(William Hinman)氏は2018年に、「十分に分散化されたネットワークにおいてはトークンは証券にあたらない」と発言している。

このような矛盾を踏まえ、UFとDEFは「DAOが多数のトークン保有者を持ち、かつそれぞれがガバナンスに自由に参加できる環境がある場合、そのネットワークは十分に分散化されており、そのトークンや関連取引は証券として扱うべきではない」と主張している。

実際、多くのDAOには運営に必要な「重要な経営的努力」を担う特定の人物やグループが存在せず、その代わりにガバナンス権限は広く分散されたトークン保有者に委ねられている。こうした状況では、「他者の努力」に依存しているとは言えない上に、トークン保有者間の意見が一致しないことも多く、SECの想定するような中央的な影響力は存在しないとした。

さらに両者は、「ブロックチェーン記録は証券法における開示義務に代わる透明性を提供する」とも主張。DAOには明確な発行体や責任者が存在しないため、誰かが情報開示義務を担うべきだとは言えないが、オンチェーンでの取引・投票・資金移動の履歴が改ざん不可能な形で記録されており、情報の非対称性(情報格差)が実質的に解消されていると述べている。

最後に、UFとDEFはSECに対し、DAOをめぐる規制の明確化に向けて3つの原則を正式に認め、ガイダンスまたはスタッフ声明として明示するよう提案した。

具体的には、第1に、DAOは分散された個人の集合体であり、統一的な組織体として扱うべきではないということ。第2に、分散化されたDAOにおいては、特定の「他者の努力」に依拠した利益の期待は成立せず、証券に該当する要件を満たさないと認識すべきということ。そして第3に、ブロックチェーンの記録は、開示義務に代わり得る高度な透明性と信頼性を備えており、情報の非対称性を解消する手段として評価されるべきだ、というものである。

SECの暗号資産タスクフォースは、業界の複数テーマに関するラウンドテーブルを定期的に開催している。次回のテーマは分散型金融(DeFi)で、「DeFi and the American Spirit(DeFiとアメリカン・スピリット)」として、6月9日に開催予定だ。

参考:書簡SECラウンドテーブル
画像:iStock/wvihrev・olegback

関連ニュース

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

JD[.]comが世界各国でステーブルコインのライセンス取得へ、クロスボーダー決済効率化に向け=報道

中国EC企業ジンドン(JD.com)が、世界各国でステーブルコインのライセンス取得を進める方針を同社の創業者で会長のリチャード・リウ(劉強東)氏が明らかにした。中国・北京で6月17日に行われた複数メディア向けの記者説明会にて発表された内容を中国メディア「ガンチャ(Guancha)」が6月18日に報じた

OSZAR »