暗号資産「仲介業」新設と保全ルール強化へ
資金決済に関する法律の一部を改正する法律案が6月6日に衆議院で可決され、成立した。
この改正案は、3月7日に金融庁によって国会に提出されたもの。
改正の目的は、金融のデジタル化の進展に対応し、利用者保護を確保しつつイノベーションを促進することである。具体的には、暗号資産(仮想通貨)および電子決済手段(ステーブルコイン)関連制度、資金移動業にかかる規制の見直しが含まれる。加えて、暗号資産交換業者や電子決済手段取引業者とユーザーとの媒介行為のみを行う「仲介業」(登録制)が新設された。
今回の改正で「仲介業」が新設されたことで、内閣総理大臣の登録を受けた事業者は、交換業者や電子決済手段取引業者としての登録を要さず、ユーザーとの媒介行為を提供可能になる。利用者への説明義務や広告規制のみ交換業者等と同様に課される一方で、利用者資産を預かるわけではないため、資本規制は不要とされている。
これまでは暗号資産交換業者とユーザーを引き合わせる行為のみを行う場合でも、暗号資産交換業者としての登録が必要であったため、参入障壁が高い状況があったが、今回の改正により規制緩和された格好だ。
さらに改正には、取引業者が破綻した際に、資産の国内保有命令を発出できる規定が盛り込まれた。これは2022年11月に経営破綻した米FTXの事例を踏まえた措置であり、日本においてもFTX Japanに対し関東財務局が国内保有命令を発出して資産の国外流出を阻止した前例がある。
金融商品取引法ではデリバティブ取扱事業者に国内保有命令が可能だったものの、現物のみ扱う事業者には適用されておらず、国外拠点の破綻時に対応が困難だったことが問題とされていた。
このような課題を踏まえ、今回の法改正により、暗号資産現物のみを扱う事業者も、国外流出の懸念がある場合には内閣総理大臣が資産の国内保有を命じる措置を講じられるようになり、顧客資産保護体制のさらなる強化が実現された。