Mycel、暗号資産のネイティブクロスチェーンスワッププロトコル「ATP v1」ローンチ

MyelがAccount Transfer Protocol(ATP)v1をローンチ

ブロックチェーン開発会社のMycel(マイセル)が、暗号資産(仮想通貨)のネイティブクロスチェーンスワップを可能にする新プロトコル「Account Transfer Protocol(ATP)v1」のローンチを5月21日に発表した。同プロトコルは、従来のブリッジやラップドトークンを使用せず、アカウント所有権の移転によって異なるブロックチェーン間でのトークン交換を実現する。

ATPは、トークン自体を移動させるのではなく、暗号鍵の所有権を安全に移転することで資産交換を行う革新的な仕組みだ。この方法により、トークンは各ブロックチェーン上でネイティブのまま保持され、ラッピングや複雑なブリッジ処理が不要になる。

また同プロトコルは、「しきい値署名方式:Threshold Signature Scheme(TSS)」とインターネットコンピューター:Internet Computer(ICP)上の「キャニスター(Canister)」技術を組み合わせて構築されている。「TSS」によって暗号鍵を複数のノードに分散させることで単一障害点を排除し、「キャニスター」によって透明性と低メンテナンスコストを実現している。

ATPの技術仕様では、アカウントは「Transferable Account(移転可能アカウント)」と呼ばれ、所有権移転を前提として生成される。アカウントの状態は「Locked(ロック済み)」「Unlocked(アンロック済み)」「Active(アクティブ)」の3つの段階を経て遷移し、各段階で異なる権限と機能が提供される。

またATPの動作メカニズムは、まず資産を「Transferable Account」にロックし、「TSS」を使用して所有権を移転し、受取人が制御権を取得するという3段階で構成される。なおこの過程では、すべてのトランザクションが成功するか、一つでも失敗すればすべてを取り消す「アトミック性」が保証され、高いセキュリティが維持される。

従来のクロスチェーン技術と比較して、ATPは各ブロックチェーンにスマートコントラクトを展開する必要がなく、流動性の分散化も発生しない。そのため現在50以上のEVM互換ブロックチェーンが存在する中で、メンテナンスコストと複雑性の問題を解決する画期的なソリューションとなるとのことだ。

対応するブロックチェーンは、ECDSAを使用するビットコイン(Bitcoin)、イーサリアム(Ethereum)およびすべてのL2、ポリゴン(Polygon)、アバランチ(Avalanche)、カルダノ(Cardano)、トロン(Tron)などに加え、EDDSAを使用するソラナ(Solana)、ニア(NEAR)、フロー(Flow)、コスモス(Cosmos)、スイ(Sui)、アプトス(Aptos)なども含まれるという。

利用用途には、クロスチェーンDEX(分散型取引所)、複数ブロックチェーン間のレンディングサービス、大規模なOTC(店頭)取引、プライバシー保護型dApps、デジタル資産やファイルの安全な交換プラットフォームなどが想定されている。

なおインターネットコンピューター(ICP)は、Dfinity Foundation(ディフィニティ財団)によって開発・運営されているブロックチェーンプロジェクト。「キャニスター」は、ICP特有のスマートコントラクトを指す。

参考:Mycelブログ
画像:iStocks/noLimit46

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

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